花道一週間〜weekly HANAMICHI〜 【月曜日】 天気もよく爽やかな朝、ゴミ収集所にゴミ捨てに行くと隣りの松本さんとお向いの橋本さんが井戸端会議をしていた。 「松本さん、橋本さん、お早うゴザイマス!」 満面の笑みで元気良く挨拶をする花道に、2人の主婦も釣られてニッコリと微笑みながら挨拶をした。 「流川さんの旦那様はいつ見ても逞しくていらっしゃって羨ましいですわ〜」 お向いの橋本さんが少し恥ずかしそうに、ほんのりと赤く頬を染めながら花道に言った。 「だって、ねぇ。松本さん?」 口元を手で隠しながら2人はオホホホと笑っている。 逞しさで言えば流川よりも自分の方が上だと思っている花道は、ぬ?と言って2人を見る。 「毎朝ベランダに立ってらっしゃるわよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・全裸で」 仕事を終えて疲れて帰った流川を待っていたのはベランダ立ち入り禁止令と強烈なパンチだった。 【火曜日】 今日は近所のスーパーでお魚の特売。ウキウキと鮮魚売り場に行くと、ご近所の吉田さんがいた。 「吉田さん、こんにちわっス!」 「あっら〜流川さんの奥さんじゃないの〜」 吉田さんは近所でも有名のおしゃべりなオバさんだ。 あんまり関わらないようにしてお魚を選んでいると、呼んでもいないのに横から吉田さんが耳打ちしてくる。 「昨日、旦那さん見たわよ〜。ひとりで駅前のちょっと外れた所の裏道に入って行ったのよ〜」 ここで著しい反応を見せると吉田さんの思うツボなので目を合わせないようにして、あっそうっスかと返す。 「怪しいと思って後着いて行ったのよ〜。そしたらいかがわしいお店に入って行って、何してたと思う?」 「男の人のアレの卑猥な模造品持って何かを企んでたのよ〜」 昨夜はソレで燃えた。 【水曜日】 夕方、今日の夕飯の煮物がおいしく出来たので裏のアパートで一人暮らししているおじいちゃんにおすそわけ。 「天才の煮物だぞっ!じじい」 このおじいちゃんは耳が遠く、話してる途中で寝ちゃったりする。 「じじいっっ!!!」 おじいちゃんの耳元で大声を出して呼ぶと、おじいちゃんはやっと花道に気がついたようだ。 「おー、花ちゃんかい。今日もムチムチじゃのう」 じじいはどさくさに紛れて花道の尻をぺろりと撫でた。今日もいいケツだった。 「オラ、じじい」と言って花道が掌を出す。 「花ちゃんはしっかりしとるのう」と言いながらおじいちゃんが財布のガマグチをパチンと開ける。 旦那に内緒でおこづかい稼ぎ。 【木曜日】 お部屋のお掃除をしていると、クローゼットの奥に見たことのない箱をみつけた。 「ぬ?」 掃除機の電気を切って、箱のふたを開けてみる。 学生だった頃になくしたと思ったパンツ、バスケの試合会場の更衣室でなくしたと思ったパンツ、 結婚式の時のお色直しでなくしたと思ったパンツ、はじめてのHの時になくなっていたパンツ、 ケンカして仲直りのHが燃えに燃えまくった時に思わずビリビリに破きながら脱いだパンツ、 スーパーで万引き犯を捕まえた時に穿いていたパンツ、川で溺れている子供を助けて股間に張り付いたパンツ、 横断歩道を渡れないお婆さんを負ぶって渡ったパンツ 没収。 【金曜日】 会社の接待で帰りの遅い旦那を待っている。 「おっせーな、ったく。ナニやってんだよ」 時計の長針と短針が重なってボーンボーンと音が鳴り響く。広い家にひとりきりで、少し心細くなっていく。 しばらくして玄関の呼び鈴が鳴ると俯きがちだった顔をパァッと上げて花道が玄関に駆けていく。 「おせかったじゃねーかよっ」 「わりーどあほう。淋しかったか?」 「んなワケねーだろっ!」 頬の赤い花道が本当の気持ちを誤魔化すように、おかえりのキスをする。 今週もお勤めゴクロウ。 【土曜日】 朝起きて、オハヨウのあいさつ代わりにまず1発。 お風呂に入って1発。メシを作ってる間に軽く1発。 遅い朝メシ兼昼メシを食って、どろどろになったシーツを洗濯して、新しいシーツを掛けて1発。 昼寝をして起きたときにはもう夕方で買い物にも行けねーじゃねーかって怒りながら1発。 てきとーに夕メシを食って、もーしねーぞって言ったのに1発。 またお風呂で1発。風呂上りのストレッチをしていたらいつの間にか1発。マッサージを頼んだのになぜか1発。 洗濯したばかりのシーツを取り替えて1発。 寝る前にやっぱり1発。もう寝るぞって言って寝る体制に入ったのに1発。 すやすやと健やかに寝る子を起こす1発。 絶倫。 【日曜日】 朝から弁当を作ってバスケコートのある公園に行く。 1on1をして休憩して、また1on1をして一緒に弁当を食べて、 近所の子供に教えたり、ミニバスケをしてたら気が付かない間に本気になってて、 子供相手にムキになって勝ったら、どあほうって言われたけど、でも勝ったら嬉しくて、 気づいたらいつの間にか夕方になっててオレンジの夕日が眩しくて、 目を細めながら並んで歩いて家に帰る。 帰る途中でラーメン屋に寄って腹いっぱいラーメンを食って、ほくほくになりながら家に帰って、 休みももう終わっちまったな、って言いながら一緒にのんびりテレビを見たりして 花道の一週間がすぎてゆく。 旦那は変態だけど、天才はいつも元気だ。 |